本がもたらす言葉の力【吉田祐也】
GMOアドパートナーズでは2021年も継続的に採用活動をおこなっています。本noteではインターネット広告・アドテクノロジーの分野で活躍する「ひと」と「いま」をお届けしています。
今回はGMOアスリーツに所属する私、吉田の趣味である読書から「本がもたらす言葉の力」について、皆さんへお伝えしたいことを綴っていきたいと思います!
ネット社会と本
約9割の人がスマートフォンを所持している現代。"ググる" "タグる"という言葉が生まれ、自らが必要とする情報を簡単に素早く取得出来るようになりました。そんな利便性のある情報化社会ですが、メディア論の研究者マーシャル・マクルーハンは1970年代に、情報化社会では「垂直的思考が後退し、水平的思考が広まる」という指摘しました。
言い換えるならば、スマートフォンを片手に情報にアクセスし収集することが容易になるだけでなく、その情報に反応し、連想ゲームのように関連する情報を水平的に繋げて思考する、つまり「広く浅い知識は身に付きやすい」という傾向が強まっていく。しかし、「物事を深掘りする」という垂直的な思考の習慣がどうしても弱くなっていく、という事なのだと思います。
本はより嗜好品のようになり、好きな人が嗜むものに過ぎなくなっているように感じます。「情報収集」という側面では読書はインターネットほど効率が良いとは言い難いからです。
文化庁が2018年度に行った「国語に関する世論調査」によると、1カ月に1冊も本を読まないという人は、全体の約半数にのぼります。残りの半数ほどの人は、1カ月に1冊以上本を読む人ですが、それでも2人に1人は本を読む習慣がないというのが現状です。
私自身読書が好きですが、あまたの本を読むうちに読書ならではの良さがあるようにも感じています。
言葉を表現する力
様々な本を読むうちに、言語能力が身につきました。誰でも手軽に使えるインターネットが進化し、インスタグラムやYouTubeがどれほど普及しても、人間にとって最初であり最後である表現手段は言語以外にはないはずです。
言語能力というものはたくさんの文章を読み、何かをたくさん書く以外に、身につけることができません。言語というのはいちばんオーディナリーで、誰にでも可能な表現手段であるだけでなく、人間にとって大事な自己表現手段でもあります。”アスリートは体現、アーティストは表現”と言われますが、非言語表現ですら、その説明を言語化するよう求められます。
なぜなら言語だけが、人間が自分の経験を認識し構成し、整序する手段だからです。
そんな私がSNSに綴る文章や人に伝えるコトバも、先人や著者からの借り物です。さまざまな本を耽読し深い影響を受けた書き手の文体を模倣し、見よう見まねで当てはめてみる。そういったことの繰り返しです。自分で創造し、つくりあげたコトバなど一語もありません。
「コトバを文章にして何かを伝える事」と「コトバを口にだして伝える事」とではまた違います。しかしどちらにも共通して言えるのは、コトバの抽斗があればあるほど表現力や伝わり方が違うということです。
そのため、人に対して何かを表現し、その表現力を身に付ける上で本を読むことは重要だと考えています。
思考を養う
経験則における話ですが、ネット上で得られる事、座学のみ経験だけでは、「なにかつまずいた時の支えになるか」と言えば疑問の余地が残ります。なにかつまずいていることの解決方法は、すでに先人たちがとっくに導き出して、本に書いていることも多く、様々な文化に触れたりして、垂直的思考や批判的思考、自己を成長させていく良書が多いのは間違いないです。
一概に本といっても、自己啓発や小説、エッセイ、さらに漫画や写真集までさまざまで、どのような本なのかによって得られるものは変わってきます。
エッセイや自己啓発などのノンフィクションの本は、2〜3日で読了するものであっても、著者は少なくとも1ヶ月以上はかけて書いていることが多く、その人の人生で得た経験則や知識、人生哲学が詰めこまれています。そういった本を手軽に読むことができるのは本ならではの良さではないでしょうか。内容によっては、自分の経験だけでは分からなかったことが、学べることもあり、良書は「人生の参考書」に成り得ます。
SNSやネット上で、自分とは違う意見を頭ごなしに否定してしまう人や、ちょっとしたデマを鵜呑みにしてしまう人が多い現代。そこにあるのは「強い固定概念」と「情報を広く浅く身につけ、深堀をしないこと」ではないでしょうか。
本を読み始め、さまざまな人の思想に触れていくと、たとえ自分とは違う意見であっても、「こういう考えもあるんだな」と受け入れられるようになってきます。また「これって本当に正しいことなの?」と批判的思考を養うことにもつながっており、思考を深く広くすることで、色々な意見を取り入れたり、自身の生活に応用できています。
疲れた頭を休め、違う視点をもたらす3冊
専門書のような小難しい本を紹介するのは野暮だと思うので、、(笑)
学生の皆さんや就活を控えている方の疲れた頭を休め、違う視点をもたらす本をご紹介したいと思います。
・『フェイクの時代に隠されていること』 著=福山哲郎、斎藤 環
政治家と精神科医の対談で、専門的な用語はなく難しい話は一切ないです。“これってなんか変だよな”をひもときながら、今の政治を解説してくれる、とっておきの良書です。
・『あたり前を疑え!』 著=大塚 類、遠藤野ゆり
学生時代、臨床心理学の授業で扱った教科書です。主に教育問題についての論旨で書かれていますが、これが普通、あたりまえと思っていることも、見る視点、立場によってビックリするほどちがうことを考えさせられる本です。
・『素敵な日本人』 著=東野圭吾
短編小説からなる作品です。東野圭吾さんならではの長編小説での見られるいつものスリリングな展開ではないにしろ、眠る前に一篇読めば、心のコリがほぐれるような内容ばかりです。「レンタルベビー」という章がおすすめです。
最後までお読みいただきありがとうございました。